2011.03.29
ずいぶんわかりやすかったです。
メインは素粒子についてですが、それを通じて宇宙というのがどういうモノであるのか、という事を折々にふれていきます。
類書に比べると、とてもわかりやすいです。ブルーバックスの類書に比べれば、もう一歩初心者向けと言ったところ。
宇宙論から、素粒子に入って、クォークから量子力学、CP対称性の破れ、そしてまた宇宙論に戻る、という駆け足の内容で、若干中間はつまり気味ですが、今日までの宇宙物理学の歴史を私のような素人が学ぶのには丁度いいのかな、という感じでした。
2011.03.27
戦国時代に日本に宣教にやってきた、イエズス会の宣教師ルイス・フロイスの著した、日本についての記述。
非常に面白いです。
元々はイエズス会内部向けの資料のため、いくらかは割り引いて読む必要があると思いますが、それを勘案しても宣教師達の、日本に対する研究度合い、観察眼、記述の詳細さ等、日本人の記述した日本史には存在しない観点からの記述がすごい。
さすが、未開の地(まあ、ヨーロッパから見れば当時の日本はそうだよね)にも臆さずつっこんでいく、イエズス会の宣教師という感じ(笑)
なお、「織田信長編」とされていますが、まだ信長は出てきません。代わりに、悪魔の化身とまでいわれる、松永久秀が大活躍ですよ!
日本史、というよりは旅行記、という感じかもしれませんね。編集で順序が入れ替えられていることもあり、よりそう感じます。
ところでちょくちょく「坊主と論争して勝った」という記述が出てきますが、結局どう論破したのか、とかがきちんと書いてないあたり、ほほえましいものがある(笑)

支配と服従の倫理学
著者/訳者:羽入 辰郎
出版社:ミネルヴァ書房( 2009-03 )
単行本 ( 309 ページ )
挑発的な文言もあるし、たぶんに著者の主観に沿った、客観としては問題がある箇所もあるけれど、それを差し引いても参考になりました。
端的に内容を説明すると、社会構造の中で、「支配」そして「服従」の状態がいかにして確立するか、あるいは、それらがどのようにして行なわれるのか、について述べられた本。
講義を元にしている為、随所に課題などが織り込まれていますが、そこには、
「講義の感想を書いて欲しい。講師の語った内容について賛同するものでも構わないが、できれば批判であって欲しい」
というような内容が随所に見受けられます。
先鋭的な論の建て方もいくつか見受けますが、それは批判されて然るべき、この本の内容が必ずしも正しいと言っている訳ではないスタンスをよく現していると思います。
この本の中で、かなり大きいパートを割いて語られるのは、
・ミルグラム実験(アイヒマン実験)
・マルクス主義
になります。
他に、ナチスドイツや、オウム真理教なども題材に取り上げられます。
「なぜ人は虐殺を行なうのか」から始まって、「いかにして支配されるのか」まで、非常に冷徹な切り口で語られていきます。
私なりに端的に要旨を理解すると、
・人はある物事を他責にすることができうる場合、いくらでも残酷になり得る。
・ある物事を他責にすることができうる状況が継続する場合、善良な人間性による結果を期待出来る度合いは減少していく。
・ある物事を他責にすることができうる理由が、一見正当に思える時が、最も危険な時である。
・他者に正当性を見いだし、その命令を遂行するような環境を継続した場合、自己の力のみでその状態から脱却するのは困難である。
・他者に正当性を見いだし、その命令を遂行するような環境が標準の場合、自己の力のみでその状態から脱却するのは不可能に近い。
・従って、そのような状況に陥る前に、デマゴギーを冷静に判断したりする思考力を持っていなければならない。
ということなのかな、と。
もっとも、社会論は評価が確定する日は来ないと思いますので、本当にそれが正しいのか、は分かりません。
たぶんこうではないのか、で生きていくしかないのでしょう。今生きている分際としては。
それでも、この本は、いろいろな事を考えさせてくれる本でした。
内容としては十二分に見合うのですが、単価が高いのがちょっと手に取りにくい要因かも知れません。
なかなか面白かったです。
副題の「感想が語れる着眼点」に至れるのか、はちょっと微妙な気もしますが。
どちらかと言えば、読者よりも、作家向けの本である気がします。
というのは、筆者の「着眼点」がかなり分析的で、構造論を中心としている為です。これはたぶん筆者が作家であるためだと思います。
1.メカニズム
2.発達
3.機能
4.進化
という、4つの観点から読む、ということを提唱しています。(このリストの元ネタは、動物行動学の基本としてあげられる「四つの質問」というものだそうです。
論もかなり細かく、実際の作品をベースに、観点を当てはめて述べられているので、とても親切だしよくまとまっている「着眼点」である、と言う風に感じます。
ただ、実際、読者専業の人でこういう着眼点で読んでいる人がいるのか、そう読むべきなのか、と言えば、個人的にはちょっと疑問を覚えます。
あくまでも私がそう思うだけなのですが、作家の技術の一つとは、「そういった着眼点で作品を見ることを読者に意識させない」という所にあるように思います。
ある作品の構造論に踏み込むというのは、作品を一歩引いた位置から見ると言うことであって、その位置から語られた「感想」というものは、小説そのものに感じたものではなくて、作品をパラメータ化した結果なのではないのかな、と思うのですが。
着眼点のモデルケースとしてあげられている作品も素晴らしいですし、著者の解説も興味深かったです。
客観的な「着眼点」に沿った解説だけでなく、著者自身の感じた内容も織り交ぜられており、個人的には大いに参考になりました。
2011.03.26
正直書名倒れ感があり。
内容は、端的にいうと「テキストエディタの使い方」。
他の事はすがすがしいまでに何も書いてない。エディタのショートカットとか説明があるけど、そんなの本じゃなくてマニュアル見るでしょう、普通。
インタフェースが英語とかならまだ分かるけれど。
2001年という10年前の本だということを差し引いたとしても、微妙。
……まあ、10年前の本を、最近読んだ私もどうかと思いますが。

アルゴリズムクイックリファレンス
著者/訳者:George T. Heineman Gary Pollice Stanley Selkow
出版社:オライリージャパン( 2010-04-26 )
単行本(ソフトカバー) ( 396 ページ )
実コードと共に、詳細にアルゴリズムの解説がされています。
リファレンスとついていますが、手引きというよりはテキストに近いです。アルゴリズム事に有効なケース、効果を発揮仕切れないケース(ソートアルゴリズムに多い)も述べられているのですが、実際にサンプルの想定での実行結果にかかった処理時間なども載っており、非常に実質的な解説です。
解説が少し冗長気味ですが、技術書の訳本だからまあ、しょうがないかも。
アルゴリズムの基礎的な説明などはないので、経験者向け。でも、ついこの間まではこう言うの、標準スキルのはずだったんだけどなぁ……。
2011.03.22
少し判断が難しい。
アカデミックな「知」について、それぞれの著者がテーマに基づいてエッセンスを語るというもの。
論文ほど肩が凝るわけでも無いけれど、新書のようにこなれた文書になっているわけではなく、また体系化もされていないため全体としての荒さは感じます。
そこをいい、というか、わるい、と思うかは読んだ人次第。
個人的に面白い、と思ったのは、
・フィールドワーク(中村雄祐)
アフリカでのフィールドワーク中、現地の人に地図を見せてもそれが理解できていなかったようだ、という体験を元にした認識差について。
・史料(義江彰夫)
日本における反逆と正当化の論理。
・アクティアリティ(古田元夫)
ベトナム難民報道を通じた報道のあり方への考察。
あたり。(敬称略)
論文の書き方というか学術発表の仕方、というのも載っていますが、そちらは学者でもないと役立てるのは難しいかな、という印象。
ある程度自分の思考過程を、他人に分かる様に可視化するには役に立ちますが、一般向けならもっとわかりやすい方法を示している本もありますし。
これが大学の教養部で使われているテキスト(今も使っているのかは分かりませんが)だというと、うーん、と疑問を感じてしまう所ではあるかも。
ただ、体系化されきっていない荒さも含めて個人的には面白かったです。
書名と内容がいまいちあってない気がする。
また、各項の題字と内容も不整合。
例えば、「自分から率先して声をかけられない」という題に対しての回答は、「1日10人知らない人に挨拶をする」。
それができれば、初対面でも臆することなく声をかけられるようになるんでしょうが、出来ないから問題な訳なのでは??
場数を踏んで慣れろ、的なモノが多く、その、場数を踏むまでに到る心理的障壁を越える事についてフォローがないと書名に比べてちょっと距離があるかな、という気はします。
ただ、内容は割とよいと感じました。
著者の経験に裏打ちされている記述が多く、全ての事例や人に役に立つとは思えませんが、参考になる点も多いです。
結局は「考えずにさっさとやれ」という所に帰結するわけですが。
意外と面白かったですが、現代のバチカンそのものの解説は40%くらい。
他は、カトリック史という感じ。
まあ、特に中世のカトリックの変遷は余り知られていないので、そちらに裂かれる紙面が多いのはある種止むを得ないとは思います。
イエスのあたりからカトリックの成立、バチカンの確立まで順を追って解説が進むのでよく分かりやすいと思います。
反面バチカン自体の解説としては、余り深くはないので入門というところ。
ただ、著者のスタンスがこの手の本を書くには、中立性を保てず、さりとて批評もしていないという点で中途半端。
例えば、中絶や避妊などに付いてカトリックが反対している事について「女性の権利拡大の流れを留める勢力」というような表現がありますが、社会論としては正しいかも知れないですが、バチカンやカトリックの立ち位置として中立的な表現か、と言えばかなりの疑問があります。
無論、カトリックが宗教で唯一単独で、国際外交の場に席をもっている、という特殊性による影響というのはありますが。
入門書としてはよいと感じましたが、入門書に徹するのであればもう少し記述に神経を、もう一歩踏み出すのであれば思い切って踏み出して持論も述べてみた方が良かったのではないかと感じました。

億万長者 富の法則
著者/訳者:ロジャー・ハミルトン
出版社:中経出版( 2009-04-08 )
単行本(ソフトカバー) ( 319 ページ )
まあまあ面白かったです。
主題はお金儲けなんだと思いますが、別の理由で面白かったです。
この本では、人の能力や性格に応じて適性を8つに分けています。
・クリエイター
・スター
・サポーター
・ディールメーカー(交渉人)
・トレーダー
・アキュムレーター(蓄財家)
・ロード
・メカニック
それぞれの類型における、長所や短所、またそれぞれの注意点や、(たぶん本の主題の)どうお金を稼いだらいいのか、が紹介されています。
分類としては結構面白く、ある程度の経験がある人にとって参考になるところは多いと思います。分類にも特に優劣なども無く、純粋に役割に違いが有ることを示している点も良いです。
ただ、本題の「億万長者」になるためのナレッジとしては微妙かなぁ、という気もします。
所謂自己啓発本に分類されると思うのですが、タイプ解説に入ってしまうと、自分に関係の無いところは読み飛ばす人もいるでしょうから、この手の本で一番大事な「本を読ませる」という魅力にはちょっと乏しい。
分類は結構いいと思うので、むしろ「億万長者」とかいう題を捨てて、ビジネス書としてまとまってた方が良い本になったような気がします。