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2011.02.14

戦略論の原点:読んだ本


戦略論の原点(普及版)

著者/訳者:J C ワイリー

出版社:芙蓉書房出版( 2010-02-23 )

単行本(ソフトカバー) ( 272 ページ )


面白い本でした。

米国海軍元少将だった著者による総合的戦略論の下地の提示。

本文が意外と短くて(半分くらい。残りの半分は参考記事と著者の紹介、解題)びっくりしましたが、充実した内容です。

個人的に重要に感じた点は以下の4点。

1.従来の戦略、と言うものには、「順次戦略」と「累積戦略」という2つの戦略パターンがある

「順次戦略」とは、クラウゼウィッツがいう、「目的はパリ制圧、当面の目標はフランス軍撃破」、敵を屈服せしめるためにはまず敵の軍事力を打破しなければならない等とする、最終目標に向けて、段階的に達成していく戦略。
「累積戦略」とは、著者自身が例としてあげているが、第二次世界大戦の潜水艦による海洋航路遮断作戦や、戦略爆撃などを手段とする、敵の工業力などに打撃を与えるような戦略。

このうち、順次戦略は、効果を事前に測定しやすく未来予測が立てやすい(正しいかどうかは別として)が、累積戦略は、効果の測定が難しく未来予測が立てにくいとしている。

そしておそらく、近代の国民国家軍において、前者だけの戦略での戦争遂行というのはあり得ず(戦争の規模が大きすぎる)、必ず後者の戦略も活用しなければならなくなる。
結果、戦争の結果は、予測不可能になる。従って、2項の状況を制御出来るようにする、という点が重要になる。

2.戦争の目的とは、敵をコントロールすることにある

これは、クラウゼウィッツの言う、「戦争の目的は、我が方の意思を敵に強要せしめる為」というものと本質的には同じ事だが、おそらくは、著者のこの提示のほうが理解はしやすい。
極端に言えば、クラウゼウィッツの戦争目的の場合、どうしても敵戦力の打破が必要になるが、著者の戦争目的の場合は必ずしも敵の戦力を打破する必要がない。
敵の行動が予測の範囲内に収まり、かつ、必要な時に敵の行動を我が方の望む通りに出来るのであれば、ある意味では目的を達成している。

3.戦争が発生する可能性は0にならない

従って、常に戦争が起きる事を前提にして、戦略的オプションを備えている必要がある。
そして、自らが進んで開戦することが想定できない国家においては、戦争が起きるとは、常に敵に先制され敵の意図を押しつけられて始まるという事を意味する。
(敵が戦端を自ら開くというのは、短期的にか長期的にかは分からないが、少なくとも敵にとって「今戦端を開けば有利だ(あるいは勝てる)」と判断しているからに他ならない)
よって、これらの国家では、戦争とは基本的に劣位の状況から始まる事を前提とする必要がある。

4.最終的に戦場の勝者を決定するのは、戦場で銃を持ってたっている兵士による

ようは、陸軍による制圧、あるいは制圧の可能性によって最終的な戦場の勝者が確定する、という意味。


目次

まえがき
1 戦略思想家と戦略
▲“戦略は科学にはなり得ない”
2 戦略研究のための分析法
▲“戦略には道徳的な価値判断は適用されない”
3 累積戦略と順次戦略
▲戦略を2つのパターンで具体的に分析
4 戦略理論の肯定
▲戦略の理論的分析は現役の軍人だけの仕事ではない
5 今までの戦略理論 
    ①海洋理論②航空理論③陸上理論④毛沢東の理論
▲4つの戦略理論を詳しく解説
6 今までの戦略理論の限界
▲リデルハートの「間接アプローチ」を高く評価
7 総合理論の根底にある想定
▲いつでも、どこでも適用できる戦略の総合理論とは
8 総合理論の発展
▲「戦争のパターン」と「重心の操作」の重要性を史実で説明
9 理論を応用するための教訓
▲実際に当てはめる時の3つの教訓とは
10 結 論
▲狭い分野に限定しての議論は危険である
あとがき:二十年後
▲初版刊行後20年の完全版で付け加えられた
【参考記事A】「太平洋戦線を振り返って」からの抜粋
【参考記事B】海洋戦略について
【参考記事C】なぜ水兵は水兵のように考えるのか
▲この3編も完全版で付け加えられた
イントロダクション(ジョン・ハッテンドーフ)
▲1989年の完全版で付け加えられた紹介文

訳者解説・あとがき(奥山真司)
索 引

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